ヨーロッパでは、ヘルスリテラシーを測定するための包括的な尺度が開発されています。
European Health Literacy Survey Questionnaire (HLS-EU-Q47)と呼ばれるこの尺度は、47の質問項目から構成され、個人の能力だけでなく日常生活の、さまざまな場面におけるヘルスリテラシーを測定します。
HLS-EU-Q47を用いた調査結果によると、ヨーロッパ諸国の中でもヘルスリテラシーのレベルに差があることが分かっています。
HLS-EU-Q47の特徴
1.包括性:健康に関する幅広い領域と情報処理能力を評価できます
2.国際比較:多くの国で使用されていて、国際比較が可能です
3.詳細な評価:47項目という多くの質問により、ヘルスリテラシーを詳細に評価できます
4.短縮版の存在:HLS-EU-Q16(16項目)やHLS-Q12(12項目)など、短縮版も開発されています
特筆すべきは、オランダのヘルスリテラシーの高さです。
オランダは、ヘルスリテラシーに関する国際比較調査において、常にトップクラスの成績を収めていて、37.1点で1位を獲得しています。
要因として考えられるものは、情報公開度の高さ(世界トップクラス)や、健康教育や予防法の知識の充実などがあります。
EU8カ国の平均総得点が33.8に対し、日本は25.3で、日本のヘルスリテラシーは、ヨーロッパ諸国と比較して低い傾向にあります。
得点は0〜50の範囲に標準化され4つのレベルで評価されます
•不十分:0〜25点
•問題がある:25〜33点
•十分:33〜42点
•優秀:42〜50点
ヨーロッパだけでなく、アジア諸国と比較しても、日本のヘルスリテラシーは低い傾向にあり、台湾(34.4)、マレーシア(32.9)、カザフスタン(31.6)、インドネシア(31.4)、ミャンマー(31.3)、ベトナム(29.6)など、多くのアジア諸国が日本よりも高いスコアを示しています。
日本のヘルスリテラシーが低いとされる主な理由は
1.体系的な健康教育の欠如:学校教育において、健康や体について系統的に学ぶ機会が十分に整備されていない。
2.医療に関する意思決定能力の育成不足:自分で医療に関する意思決定をする力を養う機会が少ない。
3.国民皆保険制度による安心感:すぐに病院に行く思考や環境が、自ら情報収集する意欲を低下させている。
これらの要因が複合的に作用し、日本人のヘルスリテラシーの低さにつながっていると考えられています。
オランダは、国際的な健康情報サイトにもアクセスしやすく、適切な選択をするための環境が整っているので、個人が自分の人生や健康について自ら判断し、決定することを重視する文化があります。
ヘルスリテラシーを高めることで、医療機関を盲目的に信じるのではなく、適切に活用し、自身の健康を主体的に管理することができます。