魚醤は地域性と伝統的製法により独自の特徴と希少性を持っている

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魚醤(ぎょしょう)は、魚介類と塩を主成分とした液体状の発酵調味料です。

魚と塩を漬け込み、自己消化や好気性細菌の働きによって発酵させることで生成され、この過程で、魚の動物性タンパク質が分解され、アミノ酸や核酸が豊富に含まれる液体になり、最終的に特有の香りや風味を持つ、黄褐色や赤褐色の調味料になります。

魚醤には、グルタミン酸などの旨味成分が豊富に含まれていたり、ミネラルやビタミン、動物性タンパク質も含まれていて、腸内環境を整える効果も期待されています。

中国では、紀元前3世紀頃の『周礼』という書物に、政府の宴会用として120甕(かめ)の醤が備えられていたという記録が残されていて、この醤は、魚や動物の干し肉に粟の麹と塩を混ぜ、酒に漬けて発酵させたものだったとされています。

魚醤の直接の起源は、漢の時代に現れた「肉醤(ししびしお)」にあるとされていて、これは内臓を肉と一緒に漬け込んだもので、後に魚醤へと発展していきました。

魚醤の栄養価と特徴

•魚醤には体内の活性酸素を除去し、細胞や組織を保護する働きあり、有害な過酸化水素の生成を抑制し、細胞の酸化ストレスを軽減し、老化の進行を遅らせたり、がんのリスクを低減する可能性もあります。

•鉄分を強化した魚醤は、貧血の改善や予防に効果があることが示されていて、鉄の吸収阻害物質の影響を受けにくくする効果があるとされています。

•魚醤は魚を原料としているため、タンパク質含有量が比較的多く、発酵過程でタンパク質がアミノ酸に分解されるため、うま味成分が豊富です。

•発酵食品である魚醤は、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを整え、免疫機能をサポートする可能性があります。

•含有量が非常に高い、遊離アミノ酸は体内で速やかに吸収されるため、魚醤は即効性のあるアミノ酸源として機能します。

•カルシウム、マグネシウム、リン、鉄などのミネラルが含まれていて、魚由来のビタミンB群も含まれています。

日本三大魚醤は、それぞれ独特の風味と用途を持ち、日本の食文化の重要な一部を形成していて、現在も伝統を受け継ぐ人々によって製造されています。

•いしる(石川県)
石川県の能登半島で古くから作られている魚醤で、主にイワシやイカの内臓、頭、骨を塩漬けし、発酵させたものです。

江戸時代中期には既に作られていたとされ、現在も能登地域で生産されています。
地域ごとに原料や製法が異なるため、さまざまなバリエーションが存在します。

内浦側:イカの内臓を使用
外浦側:イワシやサバなどを使用

内浦で作られるイカを原料とした「いしる」は「いしり」と呼ばれることがあります。

•しょっつる(秋田県)
秋田県の伝統的な魚醤で主に ハタハタを原料としています。

江戸時代初期から作られてきた伝統調味料で、現在の秋田市新屋(あらや)で大門助右衛門という人物が最初に作ったとされています。

1990年代に、ハタハタの乱獲による資源減少の危機もありましたが、資源管理と復活の取り組みにより継承されています。

•いかなご醤油(香川県)
香川県で作られる魚醤で、主にイカナゴを原料としています。

伝承によれば、景行天皇の治世に、神櫛皇子が讃岐国の任地でイカナゴを捕り、魚醤を作って朝廷に献上したとされています。

いかなご醤油は、香川県の食文化において重要な役割を果たしています。

一般的に、長期発酵法で作られた無添加の魚醤が、高品質とされています。

伝統的な発酵食品として長年使用されてきた背景から、その潜在的な健康効果が注目されています。

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