「断食・腸内環境・代謝に基づく予防医療」とは、病気になる“前”から体の内側を整えることで、慢性疾患の発症リスクを下げるアプローチ。
断食や食事内容、腸内フローラ、エネルギー代謝を調整し、とくに心臓病や糖尿病などの代謝性疾患を予防することを目的としている。
この考え方を提唱しているのが、プラディープ・ジャムナダス博士(Pradip Jamnadas)。
ジャムナダス博士 は、イギリスとアメリカで医学教育と専門研修を積んだ心血管介入医。
University College London(UCL)で医学士・外科学士(MBBS)を取得し、卒業後はイギリスの病院でインターン・レジデント研修を経て、内科・一般外科の基礎臨床訓練を積んでいます。
アメリカではPrince George’s General Hospital(メリーランド大学関連病院)で内科レジデンシを修了し、Norwalk Hospital(イェール大学関連)で循環器内科フェローシップ、St. Luke’s Hospital(ミルウォーキー)でインターベンショナル・カーディオロジー(心血管介入)フェローシップを終え、心血管専門医・インターベンショナル・カーディオロジストとしての資格を取得しています。
♦断食
食事を一定時間や数日間とらないことで、血糖・インスリン値を下げ、ケトーシス(脂肪を燃料にしてエネルギーを作るモード)やオートファジー(細胞の自己修復)を促し、脂肪代謝や炎症を改善する狙いがある
♦腸内環境
加工食品を削減し、食物繊維・発酵食品などにより、善玉菌を増やし、腸管バリアを強化することで、全身の慢性炎症や心臓病・代謝異常のリスクを抑える考え方
♦代謝
糖質・砂糖・インスリン抵抗性に注目し、血糖・インスリン・中性脂肪・血圧を長期間安定させることで、糖尿病や動脈硬化などの「代謝性疾患」を予防する視点
ジャムナダス博士は、がん・心臓病・糖尿病などの多くは、症状が現れるずっと前から代謝や腸内環境が乱れていると考えていて、この予防医療は、「薬で症状を抑える」のではなく、食事・断食・睡眠・運動・ストレス管理によって代謝と腸を整え、発症そのものを遅らせる、あるいは防ぐことを目指している。
心臓病や代謝疾患の多くは、砂糖・加工食品・睡眠不足・腸内環境の乱れが長期間積み重なって起きるという前提に立ち、薬に頼る前に「生活習慣のリセット」を重視している。

ジャムナダス博士が断食を重視する理由は、心臓病や生活習慣病の根本原因を「高インスリン血症」と「慢性炎症」 にあると考えていて、それを下げる最も強力な手段が断食だと位置づけている。
◇ なぜ断食を「武器」とするのか
現代人は糖質や加工食品を頻繁に摂取し、一日中インスリンが高い状態にあり、この慢性的な高インスリン状態が、内臓脂肪の蓄積、慢性炎症、動脈硬化の進行を引き起こす。
彼は「カロリー制限」では不十分だとしていて、重要なのは食べない時間を意図的につくることで、断食によってインスリンを下げ、脂肪燃焼、オートファジー、腸の修復を促し、これを、代謝を立て直す“最強のツール”と表現している。
◇ 臨床経験から見た断食の意義
30年以上にわたり心血管治療の現場に立つ中で、彼は多くの患者の変化を目の当たりにし、血圧の改善、血糖値の安定、体重減少、内臓脂肪の減少、それらが断食によって起きることを確認してきたという。
彼はこれを「Fasting for Survival(生存のための断食)」というテーマで発信している。
特に36時間断食や水断食について、体が消化モードから修復モードへ切り替わり、腸壁や免疫系、さらには脳機能までリセットされると説明し、断食を長寿と健康寿命延伸の鍵だと強調している。

16:8や隔日断食などのインターミッテント・ファスティング(断続的断食)は、体重減少、インスリン感受性の改善、血圧や脂質の改善に一定の効果が示されていて、彼が語る「断食による代謝改善」という方向性は、メタアナリシスや大規模レビューの結果とも概ね整合している。
動物実験や一部のヒト研究では、断食がオートファジーの促進、炎症マーカーの低下、腸内細菌叢の変化を引き起こす可能性も報告されていて、ジャムナダス博士の「体が修復モードに入る」という説明は、基礎研究を踏まえた仮説としては妥当な範囲にあると考えられる。
総じて彼の主張は、「断食が代謝・心血管機能・長寿にポジティブな影響を与える可能性が高い」というエビデンスの方向性を、臨床的視点からやや強めに解釈したものと位置づけるのが適切だろう。
一方で、一般化・絶対化した表現については、現時点でそれを十分に裏付ける強固なエビデンスがあるとは言い難い。
「断食は有効だが、妊娠中・糖尿病・低血糖・摂食障害・重い慢性疾患の人には向かない」という大枠の方向性は、彼の見解と科学的共通認識は合っているといえます。
実践にあたっては、個別のリスク評価が不可欠です。

