カフェインレスコーヒーとノンカフェインは、「カフェインが “少ない” 飲み物」と「カフェインが “ゼロ” の飲み物」という違いがあります。
カフェインレス(デカフェを含む)は、本来カフェインを含むコーヒー豆などから、カフェインを90%以上取り除いたものを指し、「少ない」だけで、カフェインはごく微量ながら残っています。
デカフェ(Decaffeinated)はカフェインレスとほぼ同義で、主に欧米で使われる呼び方。
ノンカフェインは、もともとカフェインを含まない原料から作られる飲み物を指します。
カフェインレスコーヒーのカフェイン除去法は、大きく分けて「水系」と「二酸化炭素系」が主流です。
主なカフェイン抽出(除去)方法
水抽出法(スイスウォータープロセスなど)
水抽出法(スイスウォータープロセス)は、「水だけ」を使って生豆からカフェインを抜き取り、薬品を使わずにデカフェ豆を作る方法です。
コーヒー成分が溶け込んだ水溶液(GCE:Green Coffee Extract)を作り、その水に生豆を浸すことで、カフェインだけを水側へ移動させる仕組み。
水溶液側からはフィルターでカフェインだけを除去し、他の成分は戻すことで、風味をなるべく保ったままカフェインだけを減らします。
1.GCE(グリーンコーヒーエキストラクト)を作る
生豆をお湯に浸し、一度カフェインも風味成分も水にすべて溶かし出した「コーヒー成分+カフェイン入りの水」を作る。
2.GCEからカフェインだけを除去
この水を活性炭フィルター(カーボンフィルター)などに通し、カフェインだけを吸着させて除去することで、「カフェインだけがほぼゼロ、その他の成分は飽和した状態」のGCEができる。
3.新しい生豆をGCEに浸す
カフェイン以外の成分で飽和したGCEに、まだ未処理の生豆を浸ける。
豆の内部には「コーヒー成分+カフェイン」があるが、外側のGCEには「コーヒー成分のみ」。
この濃度差により、カフェインだけが外側のGCEへ移動し、その他の成分はほとんど動かない。
4.GCEを再利用しながらカフェインを抜いていく
豆から溶け出したカフェインを、再びフィルターで除去しつつ、同じGCEを循環させ何時間も処理することで、カフェインを97〜99%除去する。
5.豆を乾燥させて焙煎へ
カフェインが抜けた生豆を乾燥し、通常通り焙煎すると、スイスウォータープロセスによるデカフェ豆になる。
高い除去率:99%程度までカフェインを減らせるとされ、スターバックスなど大手チェーンでも採用例がある方式
薬品不使用:有機溶媒を使わず、水とフィルターだけでカフェインを除去するため、「ケミカルフリー」として安全性の高さが強調されることが多い
風味の保持:GCEを使って「カフェインだけを動かす」仕組みのため、他の水溶性成分の流出を最小限に抑えやすく、比較的コーヒーらしい味と香りが残りやすい

2.超臨界二酸化炭素(CO₂)法
超臨界二酸化炭素(CO₂)法は、「高温・高圧で“超臨界状態”にしたCO₂を、生豆に接触させてカフェインだけを溶かし出す」デカフェ用の抽出法。
水分を含ませたコーヒー生豆を圧力容器に入れ、超臨界CO₂を流すと、CO₂が豆の内部に浸透し、カフェインを選択的に溶かし出します。
その後、カフェインを含んだCO₂を別の工程で減圧したり吸着剤に通したりしてカフェインを分離し、カフェインを除いたCO₂を再び循環。
二酸化炭素に一定以上の温度と圧力をかけると、気体と液体の性質を併せ持つ「超臨界流体」になり、
この状態のCO₂は、気体のように豆のすき間に入り込みやすく、液体のようにカフェインをよく溶かす性質を持ちます。
1.生豆をスチームなどで加湿して膨潤させ、カフェインを動きやすくする
2.高圧容器に生豆を入れ、超臨界状態にしたCO₂を導入する
3.超臨界CO₂が生豆内部に入り込み、カフェインを溶かし出す(旨味・香り成分はほとんどそのまま残る)
4.カフェインを含んだCO₂を分離装置に送り、カフェインのみを除去してCO₂を再利用する
5.これを何度も循環させてカフェインを十分に除去したら、生豆を取り出して乾燥し、通常通り焙煎してデカフェ豆にする
薬品不使用:抽出に使うのはCO₂と水だけで、有機溶媒を使わないため「ケミカルフリー」な方法として位置付けられている
風味・成分が保たれやすい:超臨界CO₂はカフェインへの親和性が高く、クロロゲン酸など抗酸化成分や香り成分を比較的保ちやすいと報告されていて、日本の超臨界技術センターのデータでは、この方法ではクロロゲン酸類の減少がほとんどなく、焙煎条件によっては通常豆より濃度が高くなる例も示されている
高い除去効率と品質:1970年代以降に発展した比較的新しい方法で、高品質なスペシャルティコーヒーのデカフェにも用いられ「味が落ちにくいデカフェ」として評価されている
環境負荷の低さ:CO₂は設備内で99%以上再循環されるケースもあり、もともと大気中に放出されるはずのCO₂を再利用する技術として説明されている
3.有機溶媒法(直接法・間接法)
有機溶媒法は、「カフェインだけをよく溶かす有機溶媒(ジクロロメタン/塩化メチレン、酢酸エチルなど)を使って、コーヒー生豆からカフェインを取り除く方法」で、直接法と間接法に分かれます。
使う溶媒は、塩化メチレン(ジクロロメタン)、酢酸エチルなどの有機溶媒が代表で、カフェインを選択的に溶かしやすい性質を利用。
生豆を溶媒に直接浸ける「直接法(ケミカルプロセス)」と、生豆には直接触れさせず、“お湯側”だけ溶媒と接触させる「間接法」があります。
1.生豆を蒸気やお湯で湿らせて膨潤させ、内部のカフェインが外に出やすい状態にする
2.生豆を塩化メチレンや酢酸エチルなどの有機溶媒に直接浸け、溶媒にカフェインを溶かし出す
3.溶媒から取り出した生豆を十分に洗浄し、残った溶媒を水洗・乾燥・加熱で飛ばす
4.乾燥後、通常通り焙煎してデカフェ豆として利用する
設備が比較的シンプルで効率よくカフェインを除去でき、コストが安いのが利点とされてきましたが、生豆が薬剤に直接触れるため、溶媒の残留リスクや安全性への懸念が強く、ベンゼン使用時代から議論がありました。
現在は毒性の低いジクロロメタン等が使われ、残留基準を満たせば安全とされるものの、日本では残留基準が厳しく設定されていて、流通例は少ないとされています。

日本で流通しているものの傾向としては、「水抽出法」「マウンテンウォーター製法」「スイスウォータープロセス」「超臨界CO₂法」といった表示の商品が多く、これらは溶媒を使わないか、生豆に直接触れさせない方法。
いずれの方法でも、一般にカフェインは97〜99%程度除去され、残りが微量として残存します。
ラベルを見るときのポイントは「水抽出」「水法」「スイスウォータープロセス」「マウンテンウォーター」「二酸化炭素抽出」「超臨界CO₂」などの記載があれば、現在主流で安全性の高いプロセスと考えられます。
安心感・風味重視なら、「水系」か「超臨界CO₂系」と明記されているものを選ぶのが無難です。
妊娠中・授乳中、寝つきが悪い人、カフェインに敏感な人、持病や薬の関係でカフェイン摂取量を抑えたい人にとって、デカフェはコーヒーを楽しむための現実的な選択肢になります。

